2026/10/11 11:52

テラモンドがフリーオーダー制になった理由

現在、通常営業(※)のTe La Mondoには、単品注文がありません。

「フリーオーダー2000円制」のみのシステムで営業しています。

普通の喫茶店や喫茶スペースとは大きく異なるこのシステムに、しばしば疑問の声をもらっていますので、わざわざこの選択をした理由について書いてみます。

(※……イベントや貸切の際には、ワンドリンクオーダー制などのこともあります。)


簡単ないきさつ

2026年5月1日、Te La Mondoは「喫茶店」という明快な肩書きのもとにスタートしました。オープンした当初は、一般的な単品注文制で、二杯目の割引もありました。そのまま、5月、6月、7月、と営業を続けていましたが、8月初旬にしばらくお休みをいただいたのち、8月14日から「2000円フリーオーダー制」になりました。


そもそも、やりたかったことは

当初から、いわゆる飲食店というよりも、(ざっくりいえば)人が肩書きや役割から自由になり、その人らしくのびのび過ごせる場をつくりたくて、Te La Mondoをはじめました。だからオープンした時点では、「喫茶店」という肩書きについても、「あえて既存の言葉を使って表現するならこれかな」という参考値のようなものとして捉えていました。

しかし、カテゴリーというものはなかなかに強固なもので、来てくださる方は「喫茶店」の役割を期待していますし、自分自身の思い描く店の姿も、だんだんと「喫茶店ならこうあるべきだ」という規範に沿うものに置き換わっていきました。

そうして8月頃、店を開けることがだんだんしんどくなってきて、「あれ、自分がやりたかったのってこういうことだったっけ?」と立ち止まるタイミングが訪れました。


まず単品注文をやめることに

「しんどくなってきた」ことの理由は、正直に言ってしまえば「頑張りが報われない」と感じたからです。

とはいえ、「この人はいつも紅茶一杯だから軽めで」「この人はおかわりしてくれるからたくさん話す」というように、お支払いいただく金額によって、対応を変える気はありませんでした。差をつけたくなかった……というよりかは、そんな器用な力加減などできなかったというのが本音です。

何よりも、他ならぬ自分の決めたシステムのなかで、別に何も悪いことをしていないはずのお客さんたちに対して、勝手にネガティブな感情を抱いている自分に嫌悪を感じました。

それなら、お客さんのことを好きでいられて、自分も心置きなくエネルギーを投入できるシステムにしよう、と思いました。


何に対してお金を受け取っているのか、店に友達の家とは違う価値があるとしたら?

料金のことを考えるには、そもそも自分が何を提供しようとしていて、何に対してお金をいただこうとしているのかを考える必要があります。

単品注文制のときは、そこが曖昧になってしまっていました。紅茶一杯580〜750円。ドリンクだけではない、チェーン店とは違う何かを提供しているつもりだけど、それが何かは自分でもよくわかっていない。

そこで、オープン前から詰めていた「友だちの家とTe La Mondoの違い」について、改めて考えてみることにしました。

というのも、Te La Mondoがつくりたいと願っている「人それぞれが人間らしくのびのびできる」場は、仲の良い友だちの家に、少し似ています。特に、何度も通っていただくほどに、近づいていく部分があります。

それでも、Te La Mondoを店としてやっていきたい理由は何なのか?また、友だちの家と違う価値があるとしたら、それは何なのか?ということを考えました。

「会話」と「関係」という観点に絞ってざっくりいうと、Te La Mondoにあって、友だちの家にない可能性があるのは、この3点だと考えます。


  1. 遠慮せずに自分の話ができる。(見返りとして相手の個人的な話を聞くことを期待されない。)

  2. 都合を相談しなくても、店に出向けば話せる。(相手のコンディションや時間の制約を考慮しなくていい。)

  3. 関係の維持が強制されない。(一日話してそれで終わりでもいいし、何度か話して離れたあとにまた戻ってきてもいい。)


①②③それぞれを見てみると、店主にはお客さんの「友だち」としてではない振る舞いが求められるように思います。

①自分の欲求を優先して聞きたがられていない愚痴を話す店主、②お客さんの前で機嫌が悪く会話のやる気がない店主、③自分が好きだからという理由でお客さんに執着する店主、であってはいけないわけです。

つまり、この①②③を実現するには、店主が「ありのまま」の個人から少なからず降りる必要があります。そこには多かれ少なかれ「労働(※)」が発生していると考えられるのではないでしょうか。

※これは、本当はやりたくないのに嫌々やっているという意味ではなく、ある状態を作り出すためになんらかの「努力」が発生している、くらいの意味です。


場所を維持する、時間を費やす

また、もっとシンプルなところでいえば、場所をつくるとはまず「場所を維持する」ことでもあります。そこには支払いのコストがあります。また、場を開けて待ったり手入れをしたりするには、時間というコストもあります。


チャージでも一杯1000円でもなく、フリーオーダーにした理由

ここまでは、「お店にとって必要なモノ」という視点から、店主の労働・お金・時間を見てきましたが、やはり重要なのは、店がつける値段が、お客さんにとってどんな体験になるのかという点です。

チャージ料をつくる・一杯1000円など大幅に値上げする、などの選択肢も検討しましたが、これらは店の願いとお客さんの期待の間に齟齬が生じると感じました。

例えば、チャージ料。500円だとして、それは何に支払う金額なのか曖昧な点がありますし、仮に「会話ができることへの支払い」だとしても、店の側から会話の金額は一律で500円だと値付けすることになり、違和感が残ります。

紅茶を一杯1000円にするとなれば、とても高級な紅茶を提供する店というイメージになり、やはり店の願いとはどこかずれてしまいます。

一方、フリーオーダー制なら、飲み物一杯にも会話そのものにも値段をつけずに、店で過ごすこと全体に対して値段がつく形になります。(もちろん、それでも2000円が何の対価なのかについて、解釈の余地は残ります。)

その上で、フリーオーダー制には、次の二つの良い点もあると考えました。


  1. 「○時間いるなら、○杯は頼んだ方がいいかな」というお客さんの気遣いに頼らない形で、長居を歓迎できる。

  2. お客さんの支払い額によって対応を変えず、惜しみなくエネルギーを投入できる。


①について、お客さんと店主、それぞれの「もう一杯頼んだほうがいいのかな / この一杯で粘れたらいいな」「一杯でもたくさん頼んでもらいたい」といった密かな計算を、少なくとも飲食の最中にはやらなくて済むようになります。せっかく目の前にひとがいるのだから、そういう「計算」をちまちましながら関わることは、自分にとっても勿体ないことです。

②について、なぜそこまで「頑張り」や「エネルギー」にこだわるのかと思われる向きもあるかもしれません。そんなに頑張らなくていいから、そこそこのお値段にしてほしいと思われる方もいるでしょう。ここに関しては、自分のエゴや信奉に近く、個人的には揺るがせないポイントです。またこれについても、おいおい書くことがあるかもしれません。


気軽に立ち寄っていただく方法

ざっくりと、このような経緯のもとで、通常営業の単品注文をやめ、2000円フリーオーダー制への変更を行ないました。

この変更によって、店に気軽に立ち寄りづらくなったと感じる人が増えた側面は、明確にあると思います。これに対して店が出せるアンサーについては、まだ模索している最中ではあります。

一応、今の時点では、(比較的)気軽に利用してもらえる方法は二つあります。

①店内で販売している本やZINEを見ていただく(購入せず見るだけも大丈夫です)
②イベント時など、フリーオーダーではないタイミングで遊びにきていただく

これからもいろんな方法を検討していきますので、よろしくお願いいたします。


この長い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

そして、2000円フリーオーダーの変テコな店を受け入れてくださっている方々に、いつも感謝しております。

今後とも、Te La Mondoをよろしくお願いいたします。

P.S.

このシステムに変更した際、ひとりで読書をするために利用される方が減ってしまうことを覚悟したのですが、幸いなことにたまに訪れていただいています。お店の雰囲気がいつでも静かであることは保証できませんが、カウンターだけでなくテーブル席を使ってもらってもいいですし、のんびり過ごしていただければと思います。

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